2026年度 再生エネ事業トレンド予測
日本の再生可能エネルギー事業は、導入量拡大から系統制約・市場統合・需要家脱炭素を同時に満たす「統合電源化」の局面へ移行している。第7次エネルギー基本計画およびGX2040ビジョンは、脱炭素と電力需要増を織り込み、投資予見性の確保を強調する。
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一般社団法人 日本再生可能エネルギー地域資源開発機構
政策の大枠と構造転換
上位方針
第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョンは、DX進展・電化に伴う電力需要増の可能性を織り込み、投資予見性の確保を強調する。再生エネの導入量だけでなく、安定供給・調整力確保・系統整備といった主力電源化の条件整備を政策目的に内包している。
制度の基盤
再エネ特措法(FIT/FIP法)は導入促進と同時に、国民負担抑制・事業規律・入札等の設計を通じて市場統合と規律強化を進める。再エネ事業の競争軸は、単なる発電設備の建設から、制度要件遵守・価格変動・運用最適化・説明責任を組み込む総合設計へ移行している。
再エネ主力化を阻む4つのボトルネック
1
系統混雑と出力制御
ノンファーム型接続は全国展開し、出力制御は「例外」から「前提」へ移行。投資を阻む本質は「いつ・どの程度抑制されるか」という収益予見性の欠如である。
2
市場統合下の収益変動
FIPの下では市場価格連動が基本となり、価格・量・抑制・制度コストの複合リスクが顕在化。ヘッジ・運用・契約設計を通じたリスク制御が必須となる。
3
柔軟性の不足
需給調整市場は2021年創設、2024年度に全商品区分で取引開始。募集量に対して応札量が満たない局面が整理され、柔軟性供給の余地が残る。
4
中小企業の脱炭素停滞
環境省資料は、NDC達成には中小企業への裾野拡大が必要だが、与信が壁になること、PPAや証書は中小企業に追加コストとなり普及しづらいことを明示する。
分析枠組み:PGMDモデル
Policy(政策)
上位計画・制度改革・補助・自治体政策の方向
Grid(系統)
ノンファーム、混雑・抑制、接続手続、予見性
Market(市場)
FIP、需給調整市場、容量市場、環境価値
Demand(需要)
需要増(DX/電化)、需要家調達(PPA等)、中小企業裾野
この4層は相互依存し、いずれか一つの変化が他層の事業機会を生成する。2025年度の観察結果をもとに、2026年度に顕在化する主要トレンドを提示する。
2025年度の現時点総括
1
系統
ノンファームは全国展開し、出力制御量は増加傾向。「抑制を織り込んだ事業性評価」「抑制回避・吸収策」が中心論点化した。
2
市場
需給調整市場は全商品取引開始後も、応札不足局面が確認される。柔軟性供給は今後の市場機会となる。
3
需要家
コーポレートPPAは拡大するが、制度費用や契約設計の難度が増し、単純な電力単価比較では評価できない局面に入っている。
4
洋上風力
2025年12月、青森県沖日本海(南側)および山形県遊佐町沖の公募占用計画が認定。完遂リスクの分解と配分が中心課題となる。
5
都市分散
東京都は2025年4月から新築建物への太陽光等義務化を開始し、屋根資源の市場化を制度で押し上げた。
2026年度の5大トレンド予測
低圧リソースの事業化本格始動
経産省はERABガイドライン改定により、需給調整市場での低圧リソース活用および機器個別計測を2026年度から開始。家庭・小規模設備を含む分散資源の計測・同意・契約・運用が事業機会となる。
出力制御リスクの予見・吸収・価値化
資源エネルギー庁は出力制御量の増加傾向と2026年度見通し算定を提示。再エネ×蓄電池、需要側制御、市場取引の統合運用により、抑制を「柔軟性価値」へ転換するモデルが主流化する。
制度コスト込みの契約設計競争
PPAは継続拡大する一方、制度コストやリスク配分を条項に内包する設計力が競争力となる。価格条項、環境価値の帰属、制度費用変動等を統合した「契約金融」領域が成長する。
洋上風力の完遂重視
認定済み案件が進むほど、EPC遅延、資材調達、金利・為替等の完遂リスクが顕在化。保険・保証・ファイナンスによるリスク分解と配分設計が重要な評価軸となる。
与信ボトルネック超えるスキーム
環境省資料が示す通り、PPA等は中小企業に追加コストになりやすい。光熱費削減を中心に、信用補完・保険・長期分割を組み合わせた実装性重視のスキームが政策目的に合致する。
Roof Plus:次世代の主流モデル
位置づけ
中小企業の大半は、PPAの審査・規模要件で対象外になりやすい。Roof Plusは、信用補完付き長期ファイナンス(自家所有型)を核に、突発コスト/性能リスクのヘッジと運用安定化をパッケージ化する。
仕組みの要点
損保+リースによる信用補完と、個社審査ではなく統計的に「面」でリスクを見る設計。遠隔監視・長期割賦契約等による安定運用。普及目標は中小企業2,000社×100kW=200MW。
2000
目標企業数
中小企業への普及目標
100kW
平均設備容量
1社あたりの導入規模
200MW
総発電容量
プログラム全体の目標
PPAとの比較優位性
Roof Plusが優位
PPA対象外になりやすい中小企業層に対し、与信・突発コスト・運用不安をパッケージで解消し、キャッシュフロー改善として提示できる。「払い捨ての電気代」より低いコスト構造を実現する。
PPAが優位
信用力が高く、一定規模の需要家で設備保有を避けたい場合。大規模需要家や上場企業等、審査を通過できる層に適している。
併用戦略
需要地(屋根)でRoof Plusにより費用/BCP/削減を確保し、追加分をPPAで積み増す。両スキームの長所を組み合わせた最適化が可能である。
自治体政策との接続
01
大阪府の実例
府公式HP掲載と府内約1万社への推奨メールマガ配信を実施。PPAでは採算が合わず断られていた小規模需要家から反応が出始めた。公的な推奨(指定)=信頼の付与が普及のレバレッジとなる。
02
GX指定スキーム構想
地銀が中立的GXコンサルとして動くため、PPAとRoof Plusを需要家属性に応じて提示する「GX指定スキーム(メニュー表)」を自治体が公表。地銀・保険・代理店等の普及チャネルが機能する。
03
政策提言
普及期における官製信用補完の検討、標準シミュレーションツールの開発・公開、自治体×地銀×EPC×RDoの協議会構想等。政策目的(裾野拡大)と事業実装(与信・運用・可視化)を接続する。
結論:統合型再生エネへの収斂
2026年度の再生エネ事業トレンドは、政策志向(需要増・投資予見性)を背景に、系統制約(出力制御の前提化)と市場統合(FIP・需給調整市場)の同時進行によって、「統合型再生エネ」へ収斂する。低圧リソース活用開始は分散資源の事業化を押し上げ、出力制御の増勢は抑制リスクの管理・価値化を標準要件にする。
政策整合性
信用補完付き長期ファイナンスと運用・リスクヘッジを統合したRoof Plusは、PPAが届かない需要家層を含め、政策目標(裾野拡大、地域脱炭素)と市場実装を接続する次世代の主流モデルとなり得る。
自治体の役割
自治体は補助金に加え、公的推奨(お墨付き)とGX指定スキームの提示により、普及チャネルを機能させることで導入を加速できる。大阪府の実例がその有効性を示している。
環境省が明確に課題設定する中小企業の与信ボトルネックを超える仕組みとして、Roof Plusは政策目的と事業実装を接続する合理的な解となる。